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1票の格差と民主主義

 

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第24回参議院議員通常選挙が終わったと思ったら、東京では都知事選挙が始まりました。

以前は、選挙といえば選挙カーが走り回って、候補者の名前を連呼するのを、「うるさいなあ」と思ったりもしていたのですが、最近はだいぶ様相が変わっているようです。

例えば、先日の参院選の東京都選挙区でトップ当選した議員は、野党の代表代行で、むしろ全国に応援に行かなければならないという立場もあってか、一度も選挙カーに出会うことはありませんでした。それどころか、当選した6名、いや、31名の候補者のうち、どの候補者の名前も連呼されているのを聞きませんでした。

かろうじて、与党の比例区から立候補している候補者の選挙カーが事務所の近くを通るのを見かけたくらいでしょうか。

少なくとも東京あたりでは、伝統的な選挙運動は流行らないのかも知れません。

さて、先日の参院選では、はじめて都道府県をまたいだ選挙区、いわゆる合区での選挙が実施されました。鳥取県・島根県選挙区と徳島県・高知県選挙区の2つです。これら合区は、2015(平成27)年7月の公職選挙法改正によって生まれたものですが、さかのぼれば、これはいわゆる一票の格差を違憲状態とする最高裁判決が2009(平成21)年以降相次ぎ、国会もようやく重い腰を上げたというのが実情でした。

一票の平等が求められるのは、憲法上の平等原則に基づきます。

すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

日本国憲法第14条1項

選挙権に関しては、

公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。

日本国憲法第15条1項

とされていますから、14条1項とあいまって、選挙における投票の権利も平等であることが必要ということになります。



しかし、一票の平等を厳密に実現するのはなかなか簡単ではありません。

ひとつには、人口というのは常に流動的ですので、選挙区間の一票の格差をなくすためには、選挙前に毎回国勢調査を行って議員定数の配分を見直さなければならず、大変なコストがかかります。定期的に国勢調査は行われているので、一番最近の調査結果をもとにして一票の平等を考えるというあたりで妥協するのはやむを得ないでしょう。

また、国勢調査が実施できたとしても、議席数には限りがあり、定数配分は常に整数でなければいけませんから、割り算の余りのように誤差が生じることは避けられません。

参議院の場合、現在の定数が242議席で、選挙は3年ごとに半数が改選となりますので、1回の通常選挙で121議席が改選されるのですが、全国に47都道府県がある上、比例区の議席もありますので、各都道府県単位の選挙区ごとに最低1議席の定数を割り振ると、どうやっても一票の価値は誤差とは言えないほどの差になってしまいます。そこで導入されたのが合同選挙区、略して合区です。

都道府県単位の選挙区は憲法上の規定ではなく、むしろ、

両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。

日本国憲法第43条1項

とされているとおり、各選挙区から選出された参議院議員も、選挙区の代表者ではなく、全国民の代表者とされているわけですから、どこの選挙区から選出されても全国民を代表することになります。選挙区を都道府県単位にするのは、いわば選挙を運営する事務上の配分に過ぎません。

今回の合区について、「選挙区が広すぎて候補者が直接有権者に語りかける機会を十分に作れなかった」という問題点を指摘して、「合区は地方をないがしろにしている」という意見も見受けられます。

しかし、決して広いとは言えない東京都選挙区で31名もの候補者がいたのに、選挙期間中に選挙カーひとつ出会わなかったくらいですから、選挙区の広い狭いの問題ではないようです。

それより、「地元を大切にする」政治家が、一票の価値に不平等が生じてもかまわないかのようなことを言うのは、個人の権利を大切にする日本国憲法の根本を誤解しているのではないかと考えざるを得ません。

 - 前文, 第3章 国民の権利及び義務, 第4章 国会

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