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国会の開き方

 

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国会は議会ですから、開会されなければ国会としての機能を発揮できません。たとえば国会議員が全員集まって公開討論会を経て決議を上げたとしても、国会決議にはならないのです。

国会は、「召集」という手続によって初めて始動します。
ちなみに、同じ「しょうしゅう」でも、株主総会の「招集」とは違って、「召」という文字が使われます。これは要するに、国会を召集するのが天皇だということにあるのですね。

第7条  天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
1 (中略)
2  国会を召集すること。
(後略)

「内閣の助言と承認」というと、まるで、内閣から「次の国会は来月1日に開会というのではいかがでしょうか」とアドバイスしたり、「陛下の仰せのままに」と承認したりするみたいですが、もちろん違います。「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。(憲法4条1項)」ということで、実質的決定権は内閣にありますから、内閣が期日等を決めて、召集手続が行われることはもちろんです。

国会には衆議院と参議院がありますが、衆議院は解散によって所属する国会議員がいなくなってしまうことがあります。そんな時に、どうしても国の最高機関たる国会で議決をしなければいけない事態が生じたらどうするか。国会の召集は衆議院も参議院も一緒なので、衆議院議員が誰もいない状態では、召集することもできません。

そんな時は、内閣が、参議院に「緊急集会」を行うように求めることができます(憲法54条2項ただし書き)。内閣が参議院議長に緊急集会の開催を請求して、これを受けた参議院議長が各参議院議員に通知するという段取りです。「召集」ではないので、天皇陛下にお出ましいただくまでもありません。
衆議院には、総選挙が終わって議員が揃ってから、事後承諾してもらうことになっています(憲法54条3項)。

また、これは国会の各議院ではなく、常任委員会や特別委員会でのことですが、各議院の議決で特に付託された案件について、国会が閉会した後でも審査をすることができます(国会法47条2項)。いわゆる「閉会中審査」ですね。
でも、閉会中審査はあくまで委員会レベルですので、決議をしたとしても、あくまで委員会決議であって、国会決議にはなりません。

さて、ここまでは内閣のイニシアチブで国会が召集されたり、緊急集会等が開かれたりする場面を紹介しましたが、国会自らが(正確に言うと国会議員自らが)国会の召集を求めるということがあります。

第53条  内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。

本来は議会である国会よりも行政機関である内閣の方がフットワークが軽いのは当然で、内閣が必要に応じて臨時国会の召集を決定するのがノーマルなやり方ですが、内閣が国会を飛ばして政治を押し進めようとしたり、国会の閉会中に内閣が既成事実を積み上げて、国会には事後承認を求めようとしているような場合には、国会がちっとも開かれないという事態が生じることもあり得ます。あるいは、何らかの事情で内閣としては国会を開きたくないということもあるかも知れません。

そんな時に、一定数の国会議員が内閣に対して国会の召集をするように求めれば、内閣はこれを断ることはできない、ということになっているわけです。そうでないと、総理大臣以下内閣が身勝手、身びいきな政治をはじめたとしても、それをただす機会がなくなってしまいかねませんから。

今月末にも召集される臨時国会は、野党議員からの請求を受けて開かれるものですが、せっかく臨時国会を召集しても、冒頭からなんの審議もせずに、いきなり衆議院を解散するという荒技が繰り出されるのではないかと、まことしやかに言われています。本当にそんなことがあれば、憲法を無視したあげく、国会を軽視、否、敵視しているのではないかとさえ思えてしまいます。全国民の代表者で構成されている国会を敵視するようでは、内閣失格と言わざるを得ません。

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