法の支配を知っていますか
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この憲法ブログで一番アクセスが多い記事は、実は「法治主義と法の支配」なんです。
4年も前にアップした記事にもかかわらず、いまだに多くの方に読んでいただいているのは、もしかしたら、「法の支配」というワードをしばしば使う、某国の首相のおかげなのかも知れません。
昨日から今日にかけて、また「法治主義と法の支配」へのアクセス数が増えました。なぜだろうと思って調べてみると、昨日、参議院予算委員会で「法の支配」についての質問があったのですね。
無所属ながら立憲民主党の会派に所属している小西洋之参議院議員が、安倍首相に対して、「『法の支配』の対義語は何か?」と質問したところ、安倍首相は対義語については答えず、なぜか「海・・・」と話し出したのです。
(参議院予算委員会2019年3月7日)
言うまでもなく、「法の支配」の対義語は「人の支配」ですから、1秒もかからずに答えられるものです。
権力者による専断的な統治(人の支配)に対して、権力者さえ従わなければならない「法」の範囲において統治が行われるのが「法の支配」です。専制王だけでなく、民主制における権力者であっても、従わなければならない法とは、社会において共有されている普遍的・基本的価値を守るものです。近代以降の社会にあっては、個人の自由や権利を保障することがそれであり、いかに選挙で圧倒的支持を得て信任された権力者であっても、「国家の威信」とか「国の名誉」を個人の人権より優先させることは許されません。
小西議員は、安倍首相が「法の支配」という言葉をよく使っているので、本当に「法の支配」による政治を実践しているのか問うために、その対義語を質問したのでしょう。
ところが、答えは上記のとおり、「海・・・」だったので、これは大変な肩すかしです。
これに続く安倍首相の答弁を確認すると、要するに、インドからアジア太平洋の海を繁栄の海としていくために、国際法に基づく秩序が維持されるべきで、それを「法の支配」と言っているようなのです。
なるほど、それで「海・・・」と切り出したわけです。
もちろん、国際社会という視点でものを見れば、しょせん「法の支配」はひとつの統治単位、つまり国ごとのもので、本当にそれだけで良いのか、むしろ国単位の「法の支配」を押し広げて、国際的な「法の支配」を実現すべきではないのか、という考えは理念としてはよく分かります。
しかし、「法の支配」という用語は、権力者による恣意的な統治を制限することに本質があるので、軍事力による圧倒を「抑止力」などとうそぶいている国際状況に、突然「法の支配」などという概念を持ち込むのは、いささか突飛な印象を拭えません。
力による現状変更を認めないという国際的なルールを築きましょう、という理念を指して「法の支配」と言っているのであれば、これはもう誤解を招く表現というしかありません。これ、国際的な「法治主義」ということではないですか。
実際、安倍首相、その後の答弁で、「法の支配」の反対概念を「人治主義」と言っています。でもそれ、「法治主義」の対義語です。
やっぱり、「法の支配」のことを理解されていないようです。
それなのに憲法を変えたいというのは、何か大きな心得違いをしているのではないかと考えざるを得ません。
でも安倍首相はこの記事を読んでも怒る必要はありません。
人格攻撃をしているのではなく、一国の首相ともあろう方の不勉強を一国民が嘆いているだけなのですから。
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