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日本国憲法の三本柱

 

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日本国憲法施行から68年目の憲法記念日を間近に控えています。
そこで、今回は日本国憲法の基本の「き」のおはなしです。

日本国憲法には3つの大きな柱があります。

  • 国民主権
  • 基本的人権の尊重
  • 平和主義

ご存知のとおりですね。

3つの○○とか、3大○○という言い方は日常的によく出会う表現です。3つまでのものは一度に把握できるので印象に残りやすく、理解しやすいということがあるのかも知れません。
スピーチをする時に、「今日私は、3つのことをお話ししたいと思います」と始めると、話が整理されて聴衆を飽きさせない、なんていうことを言う人もいます。

また、三本柱というと、カメラの三脚がそうであるように、3点で支えるのは非常にバランスがよく、逆に1本でも欠けると不安定になるので、いずれも欠かすことのできない重要な3要素を表すのに適切なのでしょう。

さて日本国憲法の三本柱です。
なぜ、この3つが三本柱なのでしょうか。

ヒントは日本国憲法ができた約70年前の時代背景にあります。

いうまでもなく、70年前は太平洋戦争終結の年です。
「日本国憲法は占領軍が作った押し付け憲法だ」という声がありますが、いわゆるマッカーサー草案が下敷きになっていることは疑いありません(だからといって、日本国憲法を廃棄して自主憲法を制定すべきだと短絡する必要はありません)。
占領軍が目指し、当時の日本が受け入れることになったのは、日本の民主化であり、近代化であり、非軍事化でした。

太平洋戦争当時、日本には大日本帝国憲法という憲法がありました。
いわゆる明治憲法です。
明治憲法は、天皇主権の憲法で、統治権の総帥者としての天皇に権力が集中し、議会も政府も裁判所さえも、天皇中心の国家の仕組みの一部で、国民(臣民)は支配の対象、自由は国家から与えられるものという位置付けでした。こうした権力集中構造は、結果的に軍部が主導権を握ったときにブレーキとコントロールを失うこととなりました。その結果が、あの破滅的とも思われる太平洋戦争でした。

日本国憲法は、こうした時代背景への「痛切な反省」の上にあります。
権力の仕組みは、天皇ではなく国民にこそその源があること(国民主権)。国家という仕組みは国民のために存在するもので、国家が国民に自由や権利を与えるのではなく、生まれながらに1人の人間として尊重される国民が国家を存在させていること(基本的人権の尊重)。これは、明治憲法の価値観とは相反するものです。しかし、日本が民主化し、近代化するために極めて重要な大切な価値観の転換でした。

そして平和主義です。
戦勝国による敗戦国軍解体と非軍事化は、占領政策の常套手段です。しかし、日本国憲法の平和主義は、そうした短期的な目的のものだったのでしょうか。
軍事力によらない平和の実現。これは、日本国憲法が私たちに課している宿題です。世界的に見ても、2度にわたる世界大戦を経て、軍事力では国際紛争は解決できないことが分かりました。軍事力に頼らずとも平和は実現できる、という壮大かつ崇高な理念が、日本国憲法に込められた、日本国民に託された。私たちはそれを受け入れたのです。

昨日(日本時間の今日未明)に、わが国の総理大臣がアメリカの議会で「戦後の日本は先の大戦に対する『痛切な反省』を胸に歩みを刻んだ。」と演説しました。
しかし、彼の言う「痛切な反省」は、日本国憲法に込められたそれとはずいぶん異なるようです。
宿題を放り出す態度に反省は見出せないものです。

三本柱の1本が安定を失うと、他の2本も不安定になります。
今年の憲法記念日には、そういう目で「今」を検証してみてはいかがでしょうか。

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