憲法を活かすのが国の仕事
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日本国憲法が施行から71年を迎えました。
71年前の今日、我が国は、人として生まれてきたこと、それだけを理由に個人が尊重されることを宣言しました。個人が生命を守り、自由を享受し、幸福を追求することを、最大限尊重するのが国政の仕事とされたのです(憲法13条)。
御国(皇国)のために、祖国の誇りのために、民族の自尊心のために、国民が生命を削り、不自由に耐え、滅私奉公することを、国が旗を振って奨励するのは、真反対の価値観です。
過労自殺が社会問題になっているのに、「働き方改革」などというお題目の下、労働時間管理をルーズにして残業代の支払いを少なくし、貧困問題、格差社会、生産年齢人口の減少を、「一億総活躍」とか「女性が輝く」とかいうキラキラワードで粉飾した、国民総過労社会化を押し進め、原発事故被害者の救済や、公式確認から62年も経過してなお未救済の水俣病患者に代表される公害問題の解決には、おざなりの対応と早期の幕引きに汲々とし、東北の震災からの復興も道半ばというのに、「復興五輪」の看板は倉庫の隅にしまって、オリンピック施設の建設に予算以上の経費をつぎ込み、それでも景気回復の起爆剤には不十分なら、将来の年金資金を株式市場につぎ込んで「回復感」を演出し、隣国のミサイル実験に対する抗議は大使館へのFAXで済まし、対話による東アジアの安定が正に構築されつつある局面でもなお「最大限の圧力」を強調し、米国からの軍備購入を一層進めようとする政府のあり方が、いかに憲法に基づく政治というものを理解していないかを示していると思います。
現在の我が国の総理大臣である安倍晋三氏は、かつて日本国憲法を指してこう言いました。
みっともない憲法ですよ、はっきり言って。
氏がなぜこう言ったかというと、日本国憲法の前文に、
「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」と書いてあるのは「自分たちの安全を世界に任せる」と言うことだ
と。そして、
「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」と続いているのも、「自分たちが専制や隷従、圧迫と偏狭をなくそうと考えているわけではない」ということだ
と。だから、日本国憲法は、いじましく、みっともないというのです。
言い掛かりも甚だしいとは正にこのことです。
今どき、諸国民の公正と信義に対する信頼なくして、どうやって平和を構築できるというのでしょうか。
他国が何を考えていようが、国際社会の情勢がどうであろうが、圧倒的な軍事力によって「われらの安全と生存を保持し」、「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去」するのが格好いい、それこそ国際社会のヒーローだとか思っているのでしょうか。
そういうのを覇権主義というのです。
覇権主義が跋扈した時代が何をもたらしたか、一度歴史の教科書で勉強し直すべきでしょう。
格好いいのが好きだったり、ヒーローへのあこがれを持っている時には、足元のマイナスな問題、例えば国内の貧困問題や格差拡大、災害復興、実体経済の低迷、あるいは人脈政治に対する抗議などからは、できるだけ目をそらしたくなるでしょうし、そんなことを突き付けてくる人は、自分の足を引っ張る「敵」にしか見えなくなるかも知れません。
でも、無理に格好良くならなくてもいい。
背伸びしてヒーローにならなくてもいい。
それより大事なことは国民一人一人が、国に振り回されるのではなく、生命を守り、自由を享受し、幸福を追求できること。それを尊重する政治を行うこと。
ちゃんと憲法に書いてあるんです。
国民の安全と生存を守るために、主役にも司令塔にもなろうとしないで、時局に合わせた対話に臨めばいい。むしろ、相手が引っ込みがつかなくなるくらい、対話局面を盛り上げるのがいい。
それは少しもみっともなくない。
日本国憲法に書いてあることを、本当に隅々まで実現するほうが、ずっと格好いいと思います。
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