その権限を誰が使うのか
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自民党が2012年に発表した憲法改正草案には「緊急事態条項」が盛り込まれています。
緊急事態条項のことは、緊急事態と憲法という記事でも触れましたが、これは大変物騒な「装置」で、簡単に扱えるようなものでは困る代物です。
この緊急事態条項というのは、要するに、戦争や大規模な自然災害時などに権力を内閣に集中させ、国民の権利を制限してでも国家の存立や秩序の回復を図ろうとするもので、一時的に憲法を停止させるものです。それだけの大きな影響を持つ仕組みですから、「装置」として取扱注意というのはもちろん、誰がそれを使うのかに注目が集まるのは当然です。
一般に「核のスイッチ」と呼ばれる、アメリカ大統領に与えられた核兵器の発射命令権限も、そうか、あの人の手にあるのかと思うと、暗澹とした気持ちになってしまいます。
先日ICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射実験に成功したというあの国の場合は、と考えると、これもまた何とも言えない思いにとらわれます。
自民党の憲法改正草案に盛り込まれた緊急事態条項は、内閣総理大臣の判断に始まります。内閣総理大臣には、それだけの信頼も、人望も、判断力も、洞察力も、慎重さも、責任感も、説得力も、その他もろもろが備わっていることが期待されますし、その期待に応えようとする誠実さも欠かせません。
もし将来憲法に自民党の改正草案のような緊急事態条項が盛り込まれたならば、政権選択がかかる衆院選挙への国民の関心はもっと違ってくるでしょうね。
国会での審議より先にアメリカの議会で法律制定の約束をしたり、国会の審議を省略して強行採決を計ったり、国民が疑問を抱く政治と金の問題の解明には努力せず、自分に「責任がある」とは言っても責任を取ることはせず、反省を口にしても反省の態度は見せず、友人知人には便宜を図り、官邸を擁護する官僚は栄転させ、官邸を非難する者にはスキャンダルの噂を立て、ヤジを飛ばす人々を「こんな人たち」呼ばわりして蔑視し、自らの政党が選挙で大幅に議席を減らしているその最中にフランス料理店で食事をしながら責任逃れの密談をし、自身の関与が疑われている疑惑の解明のための手続は留守中に済ませてもらう。
そんな、国難の時には誰よりも先に逃げ出しそうな人物が総理大臣でいられるような国の憲法に、緊急事態条項などどうして置くことができるでしょうか。
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