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国家という物語

 

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 最近「国家」という言葉をよく耳にするように思います。国を家にたとえたこの言い方は、決して核家族を中心とした日本国憲法下の家族像にたとえたものではなく、家父長制的な家制度になぞらえたもののように思えます。だから、何となく「国家」という言葉には、家長や戸主を中心とした絶対君主的で中央集権的な印象があります。「朕は国家なり」っていうアレですかね。
 もちろん、民主国家だって国家ですし、連邦国家だって国家には違いありません。でも何か違うんですよね。最近永田町方面から聞こえてくる「国家」の響きは。
 簡単に言うと、「国家」ってエラそうな感じがするってことです。

 国家の三要素って聞いたことがありますか? 「主権」「領土」「人民」が国家の三要素で、これらが揃ってはじめて国家ってことになっています。この三つを並べてみると、やっぱり、「国土と国民を支配している権力」っていう具合に見えますね。王様が領土・領民の上に君臨しているイメージです。

 でも思い出してください。日本国憲法では、主権者は国民とされているのです(憲法前文第1節)。王様はいません。天皇も総理大臣も主権者ではありません。統治権という意味での主権も、そのより所は国民にあるのですから、日本国憲法下での国家像は、家父長制的な「家」というよりは、シェアハウスに集う同居仲間のようなものをイメージする方が正確なのかも知れません。
 そこでは「国家」という言葉から最初に連想したような、父権的なお上による支配ではなく、自治とか自律が基本ルールになっているわけです。自治、自律をもっと規模の大きいものに置き換えると、民主主義ということになるんですね。

 じゃあ、民主国家における「国家」って何だということになる。
 国民が自分たちのことを自分たちで決めるということは、別な角度から見ると、国民がお互いにルールで縛っていることにもなります。そもそも、大勢がそれぞれ好き勝手にしていたら、やった者勝ち、早い者勝ち、強い者勝ちで、無茶苦茶な世の中になってしまう。それよりは、みんなでルールや仕組みを作って、お互いを守りましょうという社会的な合意が自然に形成される。これが「社会契約」と言われるもので、そこで生まれたルールや仕組みが「国家」というものを生み出す。と、このように説明されます。ルソーが唱えた社会契約説ですね。

 社会契約と言っても、誰もその契約書にサインしたことはありません。いわば、国家の成り立ちについての物語です。しかし、社会契約説は、民主主義の下での国家と国民との関係を理解する上で優れた物語で、日本国憲法を理解するためにもとても役立つものです。

 ところで、社会契約説を唱えたルソーは、王権神授説を唱える立場からは厳しい反発を受けたようです。それはそうでしょう。国造りの物語としては、正反対のものですから。
 翻って、わが国にも国造りの物語があったのを思い出しました。あれらの神話の世界も、王権神授説ということになるのでしょうね。その立場から日本国憲法を眺めてみると・・・。さもありなん。推して知るべし、ですね。

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