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わたしたちは日本国憲法をまもりたい

*

解散!

 

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 2007(平成19)年に発売された「ホームレス中学生」(麒麟・田村裕 著)は、当時ベストセラーになりましたが、その中で自宅マンションを差し押さえられた田村少年の父親が発した「解散!」という言葉は、段ボールをかじって空腹を紛らせたというエピソードとともに話題になりました。

 誰にも何も告げずに蒸発するのではなく、あえて一家離散を宣言する父親の言葉には、正に断腸の思いが込められていたのでしょうけれど、放り出された田村少年にとってみれば、にわかに現実のこととは思えない、冗談じゃないかと思うような出来事だったでしょう。

 さて、日本国憲法にも解散の規定があります。解散するのは、国会の、衆議院です。

第69条  内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。

 どのような場合に衆議院が解散されるのかを規定する憲法上の条文は、この第69条だけです。

 内閣は、総理大臣とその他の国務大臣で構成されています(66条1項)。
 内閣総理大臣は、国会の指名(67条)に基づいて天皇が任命(6条)し、国務大臣は内閣総理大臣が任命(68条)し、天皇が認証する(7条5号)という仕組みになっていますから、内閣は全体として国会の信任に基づいており、行政権の行使について、国会に対して連帯責任を負う(66条3項)とされています。

 そういう存在の内閣ですから、衆議院で不信任を突き付けられたり信任されなかったりしたら、存在意義が覆されることになるので、本来は総辞職するのが筋とも言えます。
 しかし、国会の考えと内閣の考えが食い違う場合に、いっそ国民の考えを聞こうではないか、という方法だって「あり」でしょう。それが「衆議院の解散」なのです。

 ちなみに、

第70条  内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があったときは、内閣は、総辞職をしなければならない。

という規定もあるため、内閣が衆議院を解散を選択しても、いずれ内閣は総辞職して、総理大臣の選び直しをすることになります。

 ところが、憲法第69条に定められた衆議院による「内閣不信任」という意思決定をきっかけとする解散は、実際には例が少ないのが実情です。
 多くの衆議院解散は、内閣が衆議院解散の閣議決定をし、これに基づいて天皇が国事行為として解散詔書を作成し(7条3号)、衆議院議長に伝達されて衆議院解散に至るという方法が取られます。天皇への助言と承認を通じて、内閣の裁量に基づく衆議院解散をするこの方法を、天皇の国事行為が定められた条文にちなんで、「7条解散」と言うこともあります。

 このあたりには諸説ありますが、内閣による解散権を認める立場では、国民に判断を求めるべき状況が生じた時には、衆議院による内閣不信任といった手続にとらわれず、内閣のイニシアチブで解散することには、一定の合理性があると考えられています。

 典型的なのは、内閣が提案した重要法案について、国会で審議を尽くしても納得が得られない、あるいは否決されてしまったというような場合です。
 そうなると、内閣は、法案をあきらめるのか、もう一度法案の練り直しをして再提案するか、いっそ総辞職するかという選択肢以外に、国民に信を問う=衆議院を解散して総選挙を行うという選択肢があってもよいのではないかというわけです。

 内閣による解散権を認めるのは、内閣と国会との緊張関係の中で国民の審判を仰ぐというものですから、十分な議論が尽くされ、国民の審判の対象と争点が明確になっていることは大前提です。

何だかよく分からないけど、急に解散だ、選挙だって言われても、困ったなあ。
とりあえず、今の顔ぶれでもっと議論してよ。

と有権者が戸惑うような選挙が行われるときは、ただの与党の延命選挙になってしまいますから、解散権の濫用と言われても仕方ないところです。

 じゃあ、解散権の濫用を止める方法は?

 それはまた、稿を改めることにしましょう。

 

 - 第4章 国会, 第5章 内閣 , ,

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