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*

刑法は自由を守る

 

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刑法には自由を保障する機能があります。

そう聞くと、

犯罪者を取り締まることで、国民の自由が守られているんだ

と思われるかも知れませんが、実はそういう意味ではありません。
犯罪行為以外は処罰の対象にならない、つまり、

刑法に触れない限り、処罰の可能性に怯えることなく、自由に活動できる

ということです。

ちなみに、ここに言う刑法には、「刑法」という名前の法律のほかにも、刑事罰が定められている法律、たとえば、軽犯罪法や覚せい剤取締法などはもちろん、会社法、破産法、著作権法なども含まれます。

もちろん、刑法には秩序を維持する機能もあります。
犯罪取締りによって治安が守られるのはその意味ですね。

誰しも、犯罪に巻き込まれ、被害者になることは避けたいと思うでしょう。ですから、犯罪はどんどん検挙してもらって、安心、安全な社会を実現してほしいと期待するのは自然なことです。

ならば、刑法による処罰の対象を拡大すれば、犯罪は根絶できるのでしょうか?

石川や 浜の真砂は 尽くるとも 世に盗人の 種は尽くまじ

石川五右衛門の辞世の句を引用するまでもなく、どんなに刑罰の対象を広げ、取締りを厳しくしたとしても、世の中から犯罪を根絶することは不可能でしょう。

他方で、犯罪を取り締り、犯罪者に刑罰を与えることは、国家に与えられた強大な権限です。刑罰は死刑、懲役、罰金などによって個人の生命、自由、財産を取り上げるものですので、やみくもに権限を拡大することには慎重でなければいけません。

日本国憲法31条は次のように定めます。

何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

また、39条前段には次のように定められています。

何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。

これらの規定から導かれるのは「罪刑法定主義」です。
犯罪や刑罰は法律によってあらかじめ明確に定められなければいけない、という原則です。

後付けの法律で処罰されないということはよく知られていますが、見落とされがちなのは「明確性」です。

どんなことをすると犯罪になるのか分からない、というのでは、自分でも気付かないうちに法に触れているかも知れない、いつ罪に問われるかも知れない、と心配になります。そんな刑法は自由を保障するどころか、人々を萎縮させ、自由な活動を妨げる結果となります。冤罪を生み出す温床にもなりかねません。

今、「テロ等準備罪」を創設する法案が国会で審議されています。この法案は、過去何度も廃案になった「共謀罪」の焼き直しだとして、野党を中心に反対の声が上がっています。

「見えない敵」であるテロを予防することが必要だとしても、激しい副作用が予想される(そもそも期待する効能はないという指摘もある)犯罪類型を作り出すことで、何が守られ、何が失われるのか、主義主張を超えて、よく見極めなければいけません。

犯罪の取締りは、所詮は対症療法です。対症療法で予防をするのはナンセンスというもの。
風邪の予防に風邪薬を飲むのはかえって毒なのです。

 

 - 第3章 国民の権利及び義務

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