国民って誰だ
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日本国憲法第10条は、次のように定められています。
日本国民たる要件は、法律でこれを定める。
この規定は「第3章 国民の権利及び義務」の中の最初に書かれているものです。そうすると、憲法で保障される権利(≒基本的人権)は、法律に決められた日本国民要件を満たしている人だけのもの、という読み方もできそうです。
でもちょっと待ってください。人権って、人が生まれながらに持っている権利ではなかったでしょうか。それとも、日本国憲法は、日本国民以外の人権は保障しない、しかも日本国民であるかどうかは法律で決めればよい、という態度なのでしょうか。
この問いに対して、憲法の表記に答えを求める考え方があります。
憲法の人権保障に関する条文を見ると、「国民は」、「すべて国民は」と書いてあるものと、「何人(なんぴと)も」と書いてあるものがあることに気付きます。そこで、「国民は」と書いてある人権は日本国民のみに保障され、「何人も」と書いてある人権は日本国民のみならず外国人にも保障されるのだ、とする考え方です。
なるほど、これは分かりやすい考え方ですね。
しかし、この考え方は通用していません。
例えば、この方法でいくと、憲法22条2項に、
何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。
と書いてあることから、「外国人が日本国籍から離脱する自由」を保障するという矛盾を生じてしまいます。
簡単なものや分かりやすいものには、落とし穴があるものです。
そもそも、国家の三要素として、「領域(領土・領海・領空)」「国民」「主権」があります。国家の構成要素である国民の範囲を定めることは、ある意味で当然のことです。移民を含めて緩やかに国籍を認める国もあれば、国籍認定が極めて制限的な国もありますが、いずれにせよ、何をもって「国民」というかのルールがあるわけです。
しかし、そのことと、誰が人権享有主体となるか、逆に言うと、誰の人権であれば侵害したり、制限したり、剥奪したり、保障しなかったりしてもよいかということは、次元の違う問題です。日本国籍を持たない外国人であっても、権利が保障されるか否かは、その権利の性質によるということになっています。憲法の文言上の違いは、あまり意味がないとされているわけです。
でも、こういう考え方をどうしても受け入れがたいって思う人もいるでしょうね。それも近年増えているようにも思います。何で外国人の権利なんか保障する必要があるんだって。こういうことを聞くと、鎖国とか島国とかムラ社会とか、そういうキーワードが連想されますが、どこか理性では割り切れないような意外と奥の深い問題が潜んでいるのかも知れないと、思わなくもありません。
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