憲法が考える家族のかたち
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小坂明子さんの「あなた」という歌、あまりにも有名なので、みなさんもご存知と思います。
「もしも私が家を建てたなら」で始まるあの歌は、もちろん理想の住宅を歌っているわけではありません。
大きな窓と小さなドアのある小さな家、古い暖炉、部屋に飾られた花々、子犬、坊や、あなた、そして私。
歌の中では叶わないけれど、そこに描かれているのは家族、家庭の姿です。
日本国憲法にも家族に関する条文があります。
第24条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
2 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。
人が個人として尊重されること(13条)を基本とする憲法にあって、この家族に関する条文はどんな意味があるのでしょうか。
日本国憲法以前の家族像を考えてみてください。
かつての家族像といえば「家」のことでした。いわゆる家制度です。「血のつながり」による男系の一族こそが家族の基本で、家と家との交わりが結婚であり、戸主として家督を受け継ぐのが相続であったわけです。選挙権が成人男子だけに認められていたのも、この男系家族の発想が根底にあると考えられます。
今でも結婚式で「○○家」なんて書かれているのは、その名残りですね。
これに対して、日本国憲法の家族像は、夫婦が基本単位です。恋愛感情によって結ばれた2人に「血のつながり」はありません。それぞれに両親もいます。やがて子供を授かることもあるでしょう。でも、あくまで家族の中心は2人が夫婦であろうとする思いにあるわけです。
ですから、結婚は2人の合意「のみ」に基づいて成立するもので、両家の家長の許可や承諾は不要です。相続も配偶者がないがしろにされることはありません。離婚にしても、嫁が三下り半で追い出されるなどということは許されません。
権利主体の最小単位が個人ならば、社会の最小単位は夫婦。その中においても個人の尊重と平等が図られなければならないというわけです。
夫婦別姓問題、性的マイノリティ問題など、家族像は今も変化し続けていると言っていいでしょう。「血のつながり」でしか家族像を描けない懐古派には、なかなか受け容れがたいことかも知れませんが、好むと好まざるとにかかわらず、時代は変わっていくのです。
(追記)
日本国憲法で、婚姻は当事者の合意「のみ」で成立するとされていることを紹介しましたが、自由民主党の改憲草案では、ご丁寧なことに、この「のみ」を削除しています。
憲法13条で「すべて国民は、個人として尊重される。」とされているのを、「個人」をやめて、「全て国民は、人として尊重される。」に改めようとしているのと同じことでしょう。
「『行き過ぎた個人主義』を改めたい」という考え(多分これは個人主義と利己主義を誤解しているのですが)の行き着く先は、結婚すら「当事者の合意だけで許していいのか」という、時代錯誤的な父権主義にたどり着くということなのではないかと思います。
それが、改憲案の思い描く家族像なのです。
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